生まれて初めてバイオリンの生演奏を間近で聞くことになるですが、その前に女子フロアに足を踏み入れることになります。当時私が住んでいたアビラカレッジの学生寮は、1階が男子フロアで2階が女子フロアになっていました。彼女の部屋は2階の女子フロアにあったので、彼女の部屋に行くと自ずと女子フロアに入ることになります。
女子寮の中
彼女から私の部屋に来ない?と誘われますが、私は即座に「女子フロアに男が入っていいの?」と聞くと、「いいんじゃないの」という答えが返ってきます。個人的には、女子フロアに男が入るのはまずいだろうとは思っていましたが、彼女がいいと言うならいいのかなと思って部屋に行くことにします。女子フロアの中に足を踏み入れると、廊下を金髪女子大生がかなり大胆な格好で歩いていました。「これはまじでやばいんじゃないのか?」と一抹の不安を感じながら彼女の後に付いて行きます。女子フロアは男子フロアと違ってとても開放的でした。部屋のドアを開けっ放しの人が多く、あられもない格好でベッドに横たわる女子大生の姿をあちらこちらで散見します。まさに女の園といった異様な光景でした。女子寮のバスルームのトイレを利用した時に、用を足して個室から出てくると、バスルームに併設されているシャワールームのカーテンが開き、中から全裸の金髪美人女子大生が出て来て、私と目が合おうと、顔を赤らめながら笑顔で”Hello”と言って来たので、私も”Hello”と言うと、彼女が”Sorry for being naked”みたいなことを言って、タオル掛けからバスタオルを取って急いでシャワールームに入ってカーテンを閉め、再びカーテンが開くと、フェイスタオルを頭に、バスタオルを体に巻いた彼女が出て来て、そそくさとバスルームから去って行きました。私はその間、体が固まって動けない状態でした。彼女が出て行った後で我に返って「ここって入ったらダメだったんじゃないか?」と自問自答していました。
彼女の部屋
彼女の部屋に入ると、何もない私の部屋とは違って、完全に自分の部屋のようにアレンジされている事と、机の書棚に並べられた本の多さに驚かされます。彼女が机の椅子に座ったので、私も椅子に座り机に置かれた本を見ていると、Computer Shopperという分厚い雑誌が目に留まります。その雑誌はパソコンの通販雑誌で、雑誌を見てアメリカのデスクトップPCの安さに驚かされていました。雑誌を見ながら私は彼女に話し掛けます。
筆者「パソコン買うの?」
Sさん「ノートパソコンが欲しくて」
筆者「ノートパソコンって、デスクトップに比べて低性能なのに高いよね」
Sさん「PowerBook(パワーブック)は高性能だよ」
筆者「パワーブック?パワーブックって?」
Sさん「Macのノートパソコン」
筆者「Macにノートパソコンなんてあるんだ」
Sさん「うん」
筆者「値段は?」
Sさん「新型のパワーブックは大体2000ドル~5000ドルくらい」
彼女がマックの雑誌を見せてくれて、パワーブックのスペックがかなり高いことを知ります。1年前にX68030-HD(80MBHDD)とモニターを40万円で買おうとしていたことを思い出して、160MBHDDと68LC040を積んだカラー液晶のパワーブックが30万円以下で買えることに驚かされ、私もパワーブックが欲しくなってしまいます。
バイオリンの生演奏を聴く
彼女の部屋の中を見回していると、ベッドの傍に黒い変な形をしたケースがあることに気付きます。
筆者「あの黒いケース何が入ってるの?」
Sさん「バイオリン」
筆者「バイオリン弾けるの?」
Sさん「弾けるよ」
筆者「何か弾いてよ」
Sさん「何かって?」
筆者「何でもいいから聴かせて」
Sさん「何が聴きたいの?」
筆者「俺でも知っているような有名な曲」
Sさんが弾いてくれたのはビバルディの四季(春)でした。彼女がバイオリンを弾いた瞬間鳥肌が立ったことを今でもはっきりと覚えています。彼女が真剣な表情でバイオリンを弾く姿を見て「これは惚れるだろう」と心の中で呟いていました。生まれて初めてバイオリンの生演奏を間近で聴いて、感動で胸がいっぱいになりました。
生まれて初めてバイオリンを弾く
Sさんが途中で演奏を止めて、顔を真っ赤にしながら私にバイオリンを押し付けてきます。
Sさん「今度はあなたの番」
筆者「えっ、俺バイオリン弾いたことないけど」
Sさん「私が教えてあげる」
筆者「いや、無理w」
Sさん「ちゃんと教えてあげるから」
筆者「壊したら嫌だし」
Sさん「簡単に壊れないから大丈夫」
筆者「本当に弾くの?」
Sさん「うん」
Sさんにバイオリンの持ち方を手取り足取り教わり、いよいよ生まれて初めてバイオリンを弾くことになるのですが、最初は手が震えてなかなか弾けませんでしたが、彼女が手を持って一緒に弾いてくれたので何とか弾けるようになりました。初めてバイオリンを弾いて音が出た時は、「ぉおおっ、すげーっ!」と猛烈に感動していました。
彼女がバイオリンだけではなく、ピアノも弾けるということを後で聞かされるのですが、この時の私は、ゴルフに乗馬にピアノにバイオリンができる彼女の事を羨ましく思っていました。
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