何故「パーム油」「マーガリン」「ショートニング」が嫌われるのか?

今回は、油を多く使う冷凍食品やパン・お菓子類等の原材料名でよく見かける「パーム油」「マーガリン」「ショートニング」が問題視されています。環境や食の安全など活動する生協でも、一部の生協限定商品の原材料名に問題あるいずれかを使用しており、組合員の多くで疑問の声があります。3つの原料が何故嫌われるのか?理由を調べてみました。

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パーム油

パーム油(英語: palm oil)はアブラヤシの果実から得られる植物油の一種です。西アフリカから東南アジア、中米などの原産であるギニアアブラヤシ(学名 Elaeis guineensis)から採取しています。飽和脂肪酸が多くその内訳はパルミチン酸が最も多く、次に一価不飽和脂肪酸のオレイン酸に富み、およそ8割をこの2つの脂肪酸で占めています。同じアブラヤシから得られるものとしてパーム核油というものがあります。パーム油が果肉から得られるのに対し、パーム核油は種子から得られるもので、組成も性質も異なります。

また、「ヤシ」に対する日本人のイメージ「ココナッツ油(ココナッツオイル)」のことをヤシ油と呼ばれています。しかし、ヤシから作られる油脂の生産量はアブラヤシ由来のものの方が多く、また「ヤシ油」という表現では混同してしまいます。「ココナッツ油/ココナッツオイル」「パーム油/パームオイル」は性質も大きく異なり、区別も必要です。

用途について

パーム油は、食用油として、インスタント食品やスナック菓子、チョコレートなどに使われることでよく知られます。また、加工食品では揚げ物や水素化したショートニングの代用として使われることもあります。パーム油は酸化しにくく、フライドチキンやコロッケ、ポテトチップスなど揚げ物はサクッ揚がりやすいこと、チョコレートなどトロッとした食感も可能です。さらに、食用以外にも、化粧品、石鹸、洗剤、医療品などにもパーム油が幅広く利用されているのです。

パーム油は多用途に使われるだけでなく、単位面積当たりの収量が他の植物油脂に比べて非常に高く、またより安価という理由もあり、世界中でパーム油の消費が急上昇しています。また、食品の原材料名にある「植物油脂」というのは「パーム油」を指すことが多いことから、見えない油とも呼ばれています。

パーム油を嫌う理由は問題点にあり

植物油の一種であるパーム油を嫌う理由には次の問題点にあるのではないでしょうか。

  1. 健康上の影響
  2. 環境・人権問題

健康上の影響

「パーム油 問題 健康」「ヤシ油 体に悪い」という検索キーワードが気になります。1980年代には、アメリカ心臓病予防協会も、動物性脂肪や、パーム油、パーム核油、ヤシ油をまとめる熱帯油の言葉によって、これらに含まれる飽和脂肪酸が心臓病のリスクを高めると呼びかけていました。血液中の LDL コレステロールが増加し、 心筋梗塞や糖尿病などのリスクが増加さらに、1989年には、大豆油由来マーガリンは水素の添加によって同様にリスクを高めるトランス脂肪酸が多いことが明らかになり、健康の面と風味や硬化の点から以下のいずれかの選択肢が生じ、動物性脂肪、トランス脂肪酸を含む植物油が由来のマーガリン(ショートニング)、パーム油、そして欧州の一部でトランス脂肪酸の使用禁止が法律化されると、パーム油の使用が増大してきた経緯があります。

結論

動物性脂肪に豊富な飽和脂肪酸は健康に対する悪影響が広く言われており、同様に飽和脂肪酸の多いパーム油についても研究されていますが、その影響については明確な結論が出ておらず、動物性脂肪より悪影響が弱い、影響なしといった様々な結果が見られているようです。食用油は適度に摂取することには問題ありませんが、どの油も過剰に取り過ぎるものではありません。

環境・人権問題

農林水産省の資料持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)により一部抜粋しています。環境・人権問題の背景や経緯には次のことが起こりました。

「持続可能なパーム油の調達と RSPO」(WWF ジャパン、2017 年)によると、パーム油
は、1990 年代から急速に需要が伸び、今では大豆油を抜いて世界で最も生産される植物油
となっている。

しかし、急速なアブラヤシ農園の拡大や不適切な農園経営等により、熱帯林、泥炭湿原林等の伐採、森林火災、生物多様性の消失、気候変動の環境問題や、住民紛争、土壌侵食・汚染等の地域社会の問題が生じている。

上記と関連して、Wikipediaの栽培より経緯が明らか見えてきます。

世界的な生産量は、国別生産量首位であったマレーシアとインドネシア生産拡大により右肩上がりに拡大し続けており、2000年代にはインドネシアが首位となりました。しかし、その一方では無秩序なヤシ園の開発と劣悪な労働環境が問題視されるようになっており、2013年9月11日、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)によってパーム油の認証制度が設立されたと記しています。

対応策 RSPO認証制度

RSPO認証制度については農林水産省の同資料にこうあります。

RSPO 認証制度のモデルは、ミグロ(スイス最大の小売業会社)によって生み出された。
ミグロが自社の認証制度を作るきっかけとして、ミグロの幹部社員がアブラヤシ産業の開
発の構造に対する批判記事を目にしたことや、スイスでは破壊的な森林伐採がよく知られ
ていたことが挙げられる。パーム油のヨーロッパへの輸出は森林伐採に大きな影響を与え
ることほどでなく、また、減少傾向にあったが、ミグロはあえて積極的に問題解決に対応する方針を選んだ。

ミグロ(独: Migros)は、スーパーマーケットを中心にデパートやディスカウントストアなどを展開するスイス最大の小売グループです。ミグロは立ち上がり、事情に精通したパートナー探しを行い、保護地域の管理団体であるWWF(世界自然保護基金) を最終的に選びました。ミグロと WWFは 2000年 5 月に最初のミーティングを行い、2000 年 11 月初旬に草案を仕上げました。ミグロは認証による競合他社との差別化を成功させ、次は標準化に目指しました。具体的には、認証基準を広く普及するために、チームにプロフォレストという独立審査機関を受け入れ、認証に客観性を持たせたり、業界全体での危機感を共有させるために、世界 3 大 NGO の WWF、グリーンピース、フレンズ・オブ・アースとともに熱帯雨林破壊についての共同キャンペーンを実施したりしました。それから、WWF とミグロが共同で開発したミグロの自社基準をもとに、国際基準の策定に動き始めたのは 2002 年夏です。のちに協議を重ね、2004 年に RSPO が設立されました。そして、2005 年に持続可能なパーム油生産の「原則と基準」が採択されたのです。のちに、ヤシの実洗剤で有名なサラヤ(株)、花王などもRSPO認証を取得しましたが、日本ではこういった制度はまだ遅れています。

企業以外に、生協パルシステムでも積極的にパーム油の問題・課題について向き合い、持続可能なパーム油の認証普及及び活動を行われています。

もう見過ごせない森林破壊。生産者と消費者がともに取り組む「持続可能なパーム油」という挑戦|KOKOCARA(ココカラ)−生協パルシステムの情報メディア
世界で最も使用されている植物油「パーム油」。環境破壊や労働問題など、様々な問題が指摘されています。そこで今回「持続可能なパーム油」に取り組む3者が、パーム油の未来と課題を語り合いました。

パーム油使用は避けられないのか?

先ほどの通り、多用途に使いやすく、安価であることから、世界中でパーム油の消費が急上昇しています。生協の中でも最も食品基準が厳しい生活クラブでさえ、消費材の一部にもパーム油を使われています。あるお菓子の消費材でパーム油が使われていることに組合員のクチコミにも「何故、パーム油が使われているのか?」とコメントされる方は多くおります。

現実、化学メーカーや食品メーカーなどの原材料の予算・コストからパーム油は100%避けることは難しいといえるでしょう。しかし、個人個人ならパーム油を一切使用しないように気を付けていくことは可能だと思います。食品に限らず、石鹸やシャンプーなども原材料にパーム油が使用されていないものを選ぶことです。

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マーガリン

よくお菓子やパンに使われるマーガリン(英語: margarine)ですが、ご存知の通り高価なバターの代用品としてつくられた食品です。マーガリンその製造過程においては精製した油脂に発酵乳・食塩・ビタミン類などに加えて乳化し煉り合せた加工食品で、その製造過程において水素付加して、常温で固めたものです。また、バターの主原料は牛乳ですが、マーガリンの主原料は植物性・動物性油脂です。植物油としては、大豆油、なたね油、コーン油、パーム油、ヤシ油、綿実油、ひまわり油などが使われており、動物油としては、主に魚油や豚脂、牛脂などが使われています。

日本ではJAS規格により、「マーガリン類」の中で脂含有率が80%以上のものがマーガリン、80%未満がファットスプレッドと分類されています。

用途について

日本マーガリン工業会のサイトを拝見させていただき、マーガリンの用途が主に3つあるとのことです。「家庭用」「学校給食用」「業務用」とあり、種類で形状が違ってくるのです。

家庭用のマーガリンは、植物油を使った柔らかいソフトタイプで、冷蔵庫に入れておいても硬くならず、すぐにパンに塗れるように作られています。またファットスプレッドという種類もあります。マーガリンは、油脂分が80%以上のものという規定があるのですが、ファットスプレッドは油脂分が80%未満のものを呼ぶそうです。マーガリンに比べ、水分が多いためあっさりとしていて、軽い味わいです。

学校給食用マーガリンは、学校給食用向けに1食分相当の6~10グラムの小型包装となっています。家庭用とは違い、マーガリンの溶ける温度「融点」に工夫がされており、家庭用マーガリンよりも3℃ほど高い38℃以下に融点が設定されています。何故なら、学校の中で給食の始まる寸前までマーガリンを冷蔵庫に置いておけないことや、夏など気温の高さで溶けてしまわないための配慮だからです。

業務用マーガリンは、別名ベーカリーマーガリンともいわれ、主にお菓子やパン作りに最も使われます。ところが、そのパンやお菓子の種類も多種多様で次々に新製品が出るため、この業務用のマーガリンはそれらの製品に合わせた用途別の便利なマーガリンがたくさん開発されているようです。

参考資料:

種類紹介 | 日本マーガリン工業会
マーガリンについての情報とレシピ・工業会の活動など

問題点

他の油脂も同様マーガリンを摂取し続けると人体に悪影響する可能性は高いです。ただ、マーガリンのトランス脂肪酸が多いから危険といわれたのは過去のものです。

対応策

元々日本人は過去も現在もトランス脂肪酸を多く摂取していないことが明らかになっています。

日本国内のマーガリンを製造している各社は、それぞれ企業努力を行い、上述の「部分水素添加油脂」を使わなくても、マーガリンの硬さを調節する方法などを開発しました。その結果、低減前でも問題のある量ではなかったトランス脂肪酸の含有量を、そこからさらに1/10まで減らした企業もあるほどです。今や、トランス脂肪酸だけを見たら、バターよりも少ないといわれており、以前から安全ではありましたが、より安全性が増しました。

AllAbout暮らし「マーガリンは体に悪い」は嘘?トランス脂肪酸はバター以下のものも

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ショートニング

ショートニングを開発したのはアメリカでラードの代用品として使われるようになったのが始まりです。要するにパンやお菓子の練り込みのための食用油脂になります。

用途について

ショートニングの用途は主にパンやお菓子を作る際の必需品といわれています。他にフライドポテト、フライドチキンの揚げ油にも使われますが、これらに添加することによって「ポロポロ」「サクサク」と砕けるのです。

問題点

大きな問題はトランス脂肪酸が含まれている可能性が高く、過剰摂取すると発がん性など危険なリスクがあります。皮肉なことに、ショートニング開発したアメリカ国内でも以前より、加工食品トランス脂肪酸の含有量の表示義務があり、ニューヨーク市やカリフォルニア州では飲食店での使用を禁じました。後より、全米の食品から排除すべき有害物質だという見解を示し、他の多くの国でも規制が進んでいます。しかし、日本では未だ使用禁止どころか規制すらなっておりません。何故なら、マーガリンと同様、日本人はトランス脂肪酸の摂取量が少ないといわれているからです。

ところが近年、日本人の間でアトピー性などアレルギー疾患が増加しているのはショートニング含まれている食品を知らず知らずのうちに多く摂取している原因もあるのではないでしょうか。

対応策

日本ではトランス脂肪酸を100%避けることは不可能ですが、トランス脂肪酸が健康に良くないことは明らかなので、消費者庁は食品メーカーに対してトランス脂肪酸に関する情報を自主的に開示するよう要請しており、一部メーカーがトランス脂肪酸の使用を削減している動きもあります。

そして、自宅ではできるだけ摂取を避ける方法の他なりません。

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まとめ

何故「パーム油」「マーガリン」「ショートニング」が嫌われるのか?

  • 「パーム油」は環境・人権問題があるため
  • 「マーガリン」はトランス脂肪酸が含まれて体に悪いといわれたが、既に過去のこと
  • 「ショートニング」は明らかにトランス脂肪酸が含まれているため
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