母が宝塚に残ることになったので、私が一人で千葉に帰ることになり、兄との地獄の共同生活が始まります。宝塚から帰ってみると、家の中がゴミ屋敷のようになっていました。兄は明け方5時頃に寝て昼過ぎに起きる夜型生活をしており、朝まで音楽をガンガンかけていたので、ほとんど眠れない毎日を過ごしていました。
朝のお出迎え
学校へ行く時は毎朝、友達と船橋駅で待ち合わせをしていたのですが、その日は私が来ないので、わざわざ家まで迎えに来てくれました。友達が呼び鈴を何度も鳴らすことで目覚めた私は、玄関で待っている友達に、このまま待ってたら遅刻しちゃうから先行っててと言います。しかし、友達は、二度寝しちゃうといけないから待ってると言い張り、結局、その日は二人で遅刻をしてしまいます。その日から、友達は朝早めにわざわざ遠回りをして私の家に来て、私の準備が終わるまで玄関で待っていてくれるようになります。そのお陰で私はほとんど遅刻をしないで済んだので、この時はいつも心の中で「持つべきものは友とはよく言ったものだ」と思っていました。
お弁当のお裾分け
宝塚から戻って来て初日にいきなり遅刻をし、兄との共同生活で当然弁当もないし金もほとんどない状態だったので、その日は昼食抜きにするしかありませんでした。友達に何で食べないのかと聞かれても、病み上がりで食欲がないと答えるしかありません。宝塚へ一週間行って休んだ時は、担任にはインフルを罹ったと母が宝塚から学校に連絡し、帰って来てからは私が友達にインフルで休んだと言っていました。いずれにしても経済的に昼食を食べる余裕がなかったので、次の日、昼食抜き生活を始めることを、いつも昼食を一緒に食べている友達に伝える事にします。
友達A「今日も飯抜き?」
筆者「うん、まだ食欲がなくて」
友達A「無理してでも食べた方が良くないか?購買まで付き合おうか?」
筆者「俺さぁ、これから昼飯抜きにしようかなって思ってんだ」
友達A「はっ?何でよ?」
筆者「昼飯、別に食べなくてもいいかなって」
この時は、このまま一ヵ月昼抜き生活を続けるつもりでいたのですが、次の日の昼休みに状況が一変します。
友達A「これお前用の箸」と言って大量の割り箸を私の机に置きます。
筆者「何で割り箸?ていうか、割り箸こんなに貰っても困るんだけど」
友達が弁当箱を開け、弁当の蓋にお弁当の一部を入れ始めます。
友達A「これお前の分ね」と言って、弁当の蓋を私に差し出します。
筆者「ほんと、こういうのいいって、まじで、昼飯別にいらないし」
友達A「いいから食えって。お前が食ってないのに俺だけ食ってると、俺の良心が痛むんだよ!友達のためと思って食べろよ。」
筆者「こういうのやめようぜ。こっちも申し訳なくなるからさぁ」
友達A「いいから早く食おうぜ。少ししかなくて悪いんだけどさ」
その後も友達の弁当のお裾分けが続きます。
弁当をお裾分けしてくれる人が増える
翌週の昼休み、別の友達が「T,おまえ冷たい奴だな。弁当ないなら何で俺に言わないんだよ」と言い出します。
筆者「え?」
友達B「あいつから聞いたぜ。今日から俺も弁当少しあげるからな」
筆者「いいって、まじで。昼なんて食わなくたって死にやしないし」
友達A「まぁそういうなって、少しでも多い方がいいだろ?」
友達B「そうそう、飯抜きは体に良くないぜ。それにお前授業中に腹鳴ってうるさいしw」
筆者「うるせーよw腹減ってんだからしょうがねーだろw」
友達B「少なくて悪いけどないよりましだろ?」
こうしてお弁当をお裾分けしてくれる人が1人から2人に増えました。さらに、別の友人がお裾分け仲間に加わります。
友達C「友達Aと友達B見てたら俺もお前に弁当あげたくなってきた」
筆者「いや、ほんとさ、気使わなくていいから、まじで」
友達C「あいつ等があげてるのに、俺があげないわけにはいかないだろ」
筆者「なんか悪いな、ほんと」
友達B「いいって、俺等友達だろ」
友達C「そうそう、友達なんだから遠慮するなって」
こうして弁当をお裾分けしてくれる友達が3人に増えました。
女子もお裾分けしてくれるようになる
3人体制でもお裾分け弁当の量はたかが知れていたので、友達Cが周囲の人達に私に弁当をお裾分けするように呼びかけてくれます。最初は、友達ではないけどそこそこ仲が良かったクラスメート達が、おかず一品とか、ごはん少量とかをくれるようになり、それを聞き付けた女子達もお裾分けをしてくれるようになります。
女子A「私これあんまり好きじゃないからあげるね♥」
筆者「おいw」
女子B「私もこの野菜あげる♪」
女子C「ごはんもあげる~」
筆者「女子からもらうと美味く感じるから不思議だ」
友達A「何だよそれwでも間接キスっぽいよな」
筆者「関節キスってw」
そんなこんなで、友達1人で始まったお裾分け弁当も、遂には一人では食べ切れない量の弁当になっていきます。
最高のクラスメート達
お裾分け弁当も1人では食べきれない量になりつつなってきたそんなある日
友達B「さすがにこれは1人じゃ食べきれないよな」
友達C「T安心しろ、俺達が食べるの手伝ってやるからな」
女子B「それT君のために作ってきたんだから食べないでよ」
友達B「何かこいつだけ女子から特別扱いされててむかつくんだけどw」
女子B「T君早く食べないとI君達にみんな食べられちゃうよ」
この時、黒板脇の教員用の机に座っていた担任が突然立ち上がり、顔を真っ赤にしながら「先生は今猛烈に感動している!!」と大声を上げます。教室でランチ中のクラスメート達が一斉に担任のA先生に注目します。当時、A先生はAちゃんの愛称で親しまれていました。
女子B「えっ、Aちゃん急にどうしたの?」
女子C「Aちゃん泣いてない?」
A先生「私も長いこと教師をしていますが、こんなに美しく、素晴らしい、友愛に満ち溢れた光景を見たことがありません。お前達は凄い、うん、ほんとに凄い、先生は嬉しい!お前達は最高のクラスメートだ!T、お前は幸せもんだなぁ、クラスのみんなからこんなに愛されて、羨ましいぞ先生、でもなT、これはお前の人徳だぞ、お前ほんといい奴だもんなぁ、おまえのそういうところずっと大事にしろよぉ」
友達B「そうだぞT、お前がいい奴だから俺達もお前のために何とかしてやりたいって思うんだからな」
友達C「Tはクラスのムードメーカー的存在だしな」
女子B「T君といると楽しいしね」
女子C「T君は愛されキャラだもんね」
女子B「あれ?T君泣いてる?」
友達A「泣くなよT~」
女子B「T君が泣くから私まで涙出てきたんですけど」
女子C「Aちゃんも泣いてるし、二人も泣いてるし、何か私も涙出てきた。」
女子A「なんか青春ドラマみたいになっててすごい感動してるんだけど」
友達C「それじゃーさ、今からみんなで校庭に出て、あの夕日に向かって走ろうぜ!」
友達B「夕日出てねーだろw」
小中高とここまで10年近く学校内で泣いたことがない私でしたが、この時だけは自然と涙が出ていました。担任のA先生が泣いていたというのもあったと思います。クラスのみんなの優しさや温かさに包まれ、先生の言った通り、こんな素晴らしいクラスメートを持てて、自分は本当に幸せ者だと、そんな風に思うと自然と涙が溢れ出ていました。


コメント