留学当初の私は、高校一年の時の三角関係のトラウマや、一人の女性(Kさん)に人生を翻弄され続けていることによって、人を好きになることに対する恐怖心のようなものを抱いていました。Avila College(今はAvila University)への語学留学は、Kさんを忘れるためだけではなく、この恐怖心を克服するための恋愛リハビリも兼ねていたように思えます。
人生初の外国人彼女
W氏の言ったように、ガリ勉眼鏡の台湾人女子大生が、真っ赤なリンゴを1個持って私の部屋を訪ねて来ます。ノック音が聞こえたのでドアを開けると、笑みを浮かべながら彼女が立っていたので、ルームメイトがいなくなって1人部屋になった私の部屋に招き入れます。彼女は部屋に入ると私にリンゴを渡しながら、”I like you.”と言って来たので、「これって告白されてるんだよな?」と思いながら、”Thank you.”と答えます。二人でベッドに並んで腰掛けながら、見つめ合ったり、モジモジしたり、お互いに何か話そうとするも会話にならず、そのうちベッドに置いた手が触れ合うと、二人で顔を赤くして照れ合ったりしていました。私は心の中で「いくら何でも初々しすぎるだろ、俺たちは小学生カップルかよ」と思っていました。
自己紹介
いざ付き合うとなると、何を話していいのか全く分からないし、英語というハードルもあって会話には苦労しました。ただ、彼女は私のことをW氏からいろいろ聞いているようだったので、自分のことをいちいち説明する手間が省けたのは助かりました。
彼女「あなたのことは何て呼んだらいいですか?」
筆者「Hと呼んでください」
彼女「Hはファーストネーム?」
筆者「はい」
彼女「ラストネームは?」
筆者「Tです」
彼女「フルネームはTH?」
筆者「はい」
彼女「私のことはSと呼んでください」
筆者「Sさんですね、分かりました」
彼女「寮生活には慣れました?」
筆者「Wさんのお陰で慣れました」
彼女「Wはいい人でしょ?」
筆者「とてもいい人ですよね」
彼女「彼は私にとっても兄みたいな人なんです」
筆者「私も兄のように思っています」
彼女「彼は頭もいいから色々聞くといいですよ」
筆者「はい」
彼女のアドバイス
彼女「ESLはどうですか?」
筆者「日本にいた時、英語は全然勉強していなかったので難しいです」
彼女「テレビを見て勉強するのがいいですよ」
筆者「テレビ?」
彼女「この部屋にはテレビがないですね」
筆者「テレビはないですね」
彼女「テレビ買わないんですか?」
筆者「買わないと思います」
彼女「買った方がいいですよ」
筆者「Wさんのところで見せてもらいます」
彼女「ニュース番組を見るといいですよ」
筆者「ニュースですか」
彼女「クローズドキャプションを見ながらニュースを聞くと、リスニングとリーディングの勉強が同時にできますよ」
この時にクローズドキャプションのことを初めて知り、このCCを利用した勉強法により、リーディングとリスニングが飛躍的に上達することになります。帰国する時にCC付きのビデオを十数本購入し、日本で日立製のCCを表示できるビデオデッキを買って、日本でもCCを使って勉強をしようとしましたが、日本に帰ると仕事と遊びで勉強どころではなくなります。
筆者「そうなんですか」
彼女「ニュースは奇麗で分かりやすい英語なので、英語初心者にはちょうどいいんですよ」
筆者「そうなんですか」
彼女「ライティングは、無料で添削してくれるTAがいるので、その人に見てもらうといいですよ」
筆者「TA?TAって何ですか?」
彼女「Teaching Assistant、チューターですね」
筆者「無料のチューターがいるってことですか?」
彼女「そうですよ」
筆者「どこにいるんですか?」
彼女「図書館です。図書館にはコンピューターもあるので、エッセイを書いたりする時に使いますよ」
筆者「コンピューターでエッセイ?」
彼女「MSワードを使ってエッセイを書いて、それをTAに添削してもらって、赤く添削されたところを修正するんです」
彼女「もう少しするとエッセイを書かされると思うので、ワードを使うようになると思います」
筆者「そうなんですか」
彼女「今度、ワードの使い方教えてあげますね」
筆者「ありがとうございます」
彼女「私はWindowsよりMacが好きなんだけど、どっちが好き?」
筆者「Macがいいです」
Macがいいと言ったのは、17歳の時にX68000を買ったのですが、このペケロクがMacライクだったからです。1994年当時の日本は、Macは一部のマニア向けで、NECのPC98の独壇場でしたが、Dos/Vマシンが出てからは、徐々にPC/AT互換機が普及することになり、Windows95が出てからは、PC98はPC/AT互換機に取って代わられます。
留学の目的
彼女「ESLの後は大学に行くんだよね?」
筆者「多分・・・」
彼女「大学では何の勉強がしたいの?」
筆者「分からないです」
彼女「何かやりたいことはないの?」
筆者「ないです」
彼女「将来何になりたいの?」
筆者「分からないです」
9年間忘れられない女性を忘れるためというのが、本来の留学の目的だったわけで、英語とか勉強とかはどうでも良かったというのが本音でした。
彼女「コンピューターには興味ないの?」
筆者「昔は好きだったけど、ゲームしかしなかったです」
彼女「コンピューターの勉強したら?」
筆者「コンピューターの勉強ですか」
彼女「私はコンピューターサイエンス学部なんだけど、10年後とか20年後はコンピューター社会になっているから、今からコンピューターの勉強をしておいた方がいいと思うよ」
筆者「そうなんですか」
彼女とは留学中によく、このコンピューター社会(コンピューター化された社会)というものについていろいろと話すことになるのですが、私が将来的にコンピューターを勉強するきっかけを与えてくれたのが彼女でした。1994年当時の日本は、今では信じられないくらい圧倒的な経済大国ハイテク大国で、彼女は、台湾も日本のようなハイテク大国になるようなことをよく口にしていました。当時、台湾、韓国、香港、シンガポールはアジアNIEsと呼ばれていて、目覚ましい経済発展を遂げていました。


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