私が転入試験を終えて関西から帰ってしばらく経ったある日の放課後、担任の先生から呼び出しを受けます。進路指導室や相談室はたまた準備室のような小部屋に入ると、先生が椅子に座って待っていました。先生に椅子に座るように促されたので、言われた通りに椅子に腰かけます。
転校しか道がない
担任「T、関西の高校に転校するのか?」
筆者「転校することになると思います」
担任「先生は転校は止めた方がいいと思うぞ」
筆者「向こうの学校の教師達にもそう言われました」
担任「だったら転校なんてする必要ないだろ」
ここで担任に我が家の特殊な家庭事情を話します。
担任「なるほどねぇ、それなら親戚の家にお世話になるとかできないのか?通学圏内に誰か頼れる親類縁者はいないのか?」
筆者「いるにはいますが・・・、この学校から結構離れているし、バスと電車なので通学が大変になるし、それに恐らく自分の部屋は用意できないかと思います。どちらの親戚もそれ程広い家ではないので」
担任「そうなのかぁ。お母さんが働くことはできないのか?お母さんが働いてこっちで二人で暮らすこともできるんじゃないか?」
筆者「うちの母はこれまで一度も働いたことが無いし、体が弱いからと言って働かないと思います」
担任「しかしなぁ、お前が家族の犠牲になる必要はないと思うんだよ先生は。なんとかならないのか?」
筆者「何ともならないから悩んでいるんですよ・・・、先生・・・」
担任としては、校則でバイトが禁止されているので、私にバイトしろとは言えないので言いませんでしたが、実際は、多くの生徒がバイトをしていたので、高校のバイト禁止校則はあくまで建前でしかありません。
涙の訴え
担任「先生はお前の転校にはとにかく反対だ、転校なんてしたら絶対ダメだからな、T」
筆者「俺だって転校なんてしたくないですよ、今のクラス好きだし」
担任「お前が転校したらお前のクラスメイト達も悲しむだろうなぁ」
筆者「俺だって別れたくないクラスメートがいっぱいいますよ・・・」
担任「行くなT!転校したらお前はお前でなくなる!お前のいいところを全部失ってしまう」
筆者「・・・」
担任「先生はお前が生まれる前から教師をやってるんだ、転校してダメになった奴を何人も見てきているんだ!絶対関西何て行ったらダメだ!」
筆者「先生、俺だって行きたくないですよ・・・でも・・・」
担任「お前が休んでる間、クラスの何人かが先生の所に来て、お前のために僕等で何かできることはないんですか?って先生の所に来たんだぞ、みんなお前のことを心配してたんだぞ」
筆者「・・・」
担任「おまえはクラスのみんなからあんなに愛されているのにそれでも行ってしまうのか?あいつ等を裏切るのか?おまえはそんな冷たい奴だったのか?な、行くなT、頼むから行かないでくれ、うぅう・・・」
この時先生は泣きながらそう言っていました。
筆者「先生、俺だって転校なんてしたくないんでよ!!」
そう言って私は部屋を飛び出して行きました。
熱血教師
それから数日して母も担任に呼ばれて学校へ行くのですが、そこでも担任は母に私を絶対に転校させたらいけないと、顔を真っ赤にして泣きながら熱弁を振るっていたことを母から聞かされました。母は担任のことを今時珍しい熱血教師だと偉く感心していました。担任の鬼気迫る涙の説得で母も私は転校しない方がいいと心変わりします、この時点で二人の意見は一致していたのですが、家賃を稼ぐためにバイトを探さないといけないのに、期末テストの勉強でそれどころではなかったのでした。期末の成績が転入には重要と聞かされていたので、とにかく少しでも良い結果を残せるようにと、急遽家庭教師を雇って勉強していました。いずれにしても当面の課題は、家賃をどのようにして工面するかということでした。
空手同好会の先輩に紹介されたディズニーバイトを断ってしまったのが、ある意味致命的な過ちでした。あの時バイトを始めてさえいれば、転校することもなかったのになぁと、少なくともこの時はそのように考えていました。


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